チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調 作品64

ドラマ「リバーサルオーケストラ」の最終回で、主人公の在籍するオーケストラがコンサートで演奏したのはチャイコフスキーの交響曲第5番。ドラマのオープニングの音楽にもこの曲のアレンジが使われていました。

チャイコフスキーの交響曲第5番、略して「チャイ5(ちゃいご)」。ちょっと可愛いですね。

交響曲第5番はチャイコフスキー円熟期の作品

チャイコフスキーは生涯に6曲の交響曲を作っています。交響曲第5番が作曲されたのは1888年。チャイコフスキーは1830年生まれなので、48歳の時の作品になります。

交響曲第5番の作曲に至るまでのチャイコフスキーの苦悩

この頃のチャイコフスキーは、作曲家として認められ、作品もロシアだけではなく、アメリカやヨーロッパでも取り上げられるようになっていました。

しかし順風満帆にここまで来たのかというと、そうではなく、結婚生活に疲弊して心身ともに病んだり、その後の親しい友人の死、家族の家庭崩壊など、それなりに散々な目にあったようです。

特に心身ともに疲弊した結婚生活と破綻、離婚がその後のチャイコフスキーに大きな影響を与えます。

チャイコフスキーのパトロンは資産家の未亡人

とはいえ、当時のチャイコフスキーには資産家の未亡人のパトロンがいて、チャイコフスキーは毎年6000ルーブルの資金援助を受けていました。苦悩の多いチャイコフスキーではありましたが、経済的な心配なく、あちこちを転々としながら音楽に打ち込める状況でした。当時の6000ルーブル、現在のお金で言うと、1000万円以上はあったようです。

このパトロン、フォン・メック夫人は、モスクワの鉄道王だった夫から多額の財産を相続しました。フォン・メック夫人はチャイコフスキーの作品に感動したことがきっかけで、その後14年もの間、チャイコフスキーに資金援助をし続けました。

でもチャイコフスキーとフォン・メック夫人は一度も直接会うことはありませんでした。二人は頻繁に手紙のやり取りをしていました。チャイコフスキーの離婚によるトラウマが原因で、会うことを拒んでいたとも言われています。

交響曲第5番を作曲した頃のチャイコフスキー

交響曲第5番の作曲に取り組んだ頃のチャイコフスキーは、ロシア音楽協会のモスクワ支部局長を務めていました。またモスクワ音楽院の試験に立ち会うなど、社会的にも認められた立場になっていました。

交響曲第5番が完成した1888年にはバレエ音楽「眠れる森の美女」も作曲しています。交響曲第5番は1888年11月にチャイコフスキー自身の指揮によりペテルブルグで初演されています。しかし専門家の評価は思わしいものではありませんでした。初演から数回の演奏でチャイコフスキーはすっかり自信をなくし、そのことをメック夫人宛の手紙にも書いています。

不評だった初演の翌月にチャイコフスキーが指揮したモスクワでの公演では好評を博し、その後ヨーロッパの各国を回って公演を行いました。このヨーロッパツアーも成功に終わり、ハンブルグでの演奏会にはブラームスも聴きに来ていました。この成功でチャイコフスキーは自信を取り戻します。

チャイコフスキー交響曲第5番はどんな曲?

一言で言うと、、一回聴くとなんだかメロディーが頭に残ってつい鼻歌で歌っちゃう曲、です。

編成

  • 木管楽器:フルート(3)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ファゴット(2)
  • 金管楽器:ホルン(4)、トランペット(3)、トロンボーン(3)、チューバ(1)
  • 打楽器;ティンパニ
  • 弦楽器:弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

構成

4楽章構成。演奏時間は約45分。第1楽章冒頭から出てくるクラリネットの低音のメロディー(運命のテーマ)が印象的です。「運命のテーマ」というと、ベートーヴェンの交響曲「運命」の有名なフレーズを思い浮かべる方が多いと思いますが、ベートーヴェンの運命のテーマが「ジャジャジャジャーン!」なのに対して、チャイコフスキーの交響曲第5番では「ターンタタターンタタタッターン」です。第1楽章から第4楽章の随所にこのテーマが現れます。

暗く始まった第1楽章に対して、第2楽章は一転して長調ではじまり、ホルンが牧歌的な美しいメロディを奏でます。続く3楽章では、ワルツのリズムに乗って木管楽器たちが変わるがわるに、ちょっと夢の中にいるようなメロディーを奏でます。

そして第4楽章が華やlかに始まりますが、2楽章、3楽章までの緩やかなメロディーを打ち消すかのような激しい短調のメロディーが登場します。ここにも「運命のテーマ」が登場、立ち塞がる過酷な運命を、前にして慄いている様の様にも思えます。

  • 第1楽章;Andante – Allegro con anima
  • 第2楽章:Andante Cantabile
  • 第3楽章:Allegro Moderato
  • 第4楽章:Allegro Vivace

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